今回は、プリパーレイションについてお話し致します。
レイニングのパフォーマンスのマヌーバーには、スピン・サークル・スピードコントロール・チェンジリード・スライディングストップ・ロールバック・バックアップがあります。
これらのマヌーバーを馬にトレーニングするには、どのような準備としての基礎トレーニングが必要なのでしょうか。トレーニングのためやショーイング前に準備をするにしても、プレパーレイションを知る必要があるのではないでしょうか。
普段馬に乗る時我々は、レイニングホースとしてより良く成長することを目的にしているわけです。
1回の騎乗において、誰でもが何らかのプログラムをもって臨んでいることでしょう。
リラクゼーション・ウオーミングアップ・トレーニング・クールダウンの4つの項目を段階的に区分して、騎乗していることでしょう。
この4つの区分にしても、リラクゼーションは次のウオーミングアップのためのプリパーレイションだということもできます。その他の段階についてもそのようにいうことができます。
それでは具体的なお話に移ることに致しましょう。
サークル
サークルに要求されることは、馬のフレームとガイドです。
私の場合は、サークル運動中にトロットでフレームとガイドを同時に行います。
馬に要求することは、外方後肢が内方前肢に向かってステップすることをゆっくりとしたトロットで求めます。このステップを要求した時にできる馬の体勢がフレームだと考えています。
そしてガイドは、このフレームをルーズな左右のレインの間に馬のフェイスとショルダーが位置することを求めます。
左右のレインの間に、馬のフェイスとショルダーが位置するように求めるとは、フェイスとショルダーが左右のレインの間から外れた時、レインをピックアップして且つ脚で馬のステップを矯正します。
なぜならば、フェイスが乱れた時は、殆どの場合ステップの乱れが原因だからです。
このときフェイスとショルダーの乱れだけを矯正して、リリースすれば直ぐにまたフェイスとショルダーがレインの外に行ってしまうのです。
私は、フェイスとショルダーの乱れが起きた時、必ずビットのプレッシャーを一定に保って、脚のプレッシャーを同時に加えて、馬のステップの方向性を矯正します。ステップが矯正されると馬はビットの対する抵抗を止めて譲ってきます。そこでビットによるプレッシャーをリリースします。
この一連の運動を大きいサークルから直径を3〜4メーターぐらいの大きさに移行したり、リバースといって、馬のフレームをそのままサークルの回転方向を逆方向へ、外方脚のプレッシャーを強めて後肢のステップ角を大きくさせて要求したりします。ここでも絶えず馬のフェイスとショルダーが左右のレインの間に位置することを維持します。
そしてこれらのエクササイズがスムースにできるようになったという感触を得て、ロープへ移行します。
このロープへの移行の時とても大事にしていることは、トロットの時にできた馬のフレームとフェイスの状態のままロープへ移行することを心がけることです。例えば、ヘッドセットしている状態であれば、頭を持ち上げて移行するのではなくて、セットしたままロープへ移行することを強くこだわります。何故ならフレームとフェイスを解放してロープへ移行すれば、それまで作ったものが可成り失われてしまって、ロープはロープでトレーンイングしなければならないというように、それまでのプリパーレイションの意味が無くなってしまうからなのです。
チェンジリード
チェンジリードのプレパーレイションは、コレクション(Collection 収縮)と前肢後肢の左右へのサイドステップを作るということだと考えています。
馬は、収縮することができることによって、左右の動きが楽にできるようになるのですが、左右の動きができるようになることによって、収縮ができるようになるともいえるので、どちらをプリパーレイションの第一段階としてやるかは、馬によってケースバイケースなので、馬の特性を見てどちらを先にやるかを決めることが大切だと思います。
元々柔らかい馬であれば、収縮を先に求めるのが良いでしょう。スティッフ(堅い)な馬であれば、左右の動きを充分にしてから収縮を求めるのが懸命だといえるでしょう。
以上のように馬のパフォーマンスをトレーニングしたり、パフォーマンスをする前に準備運動をしたりする、基礎運動をプリパーレイションといいます。
プリパーレイションをライダーが絶えず意識して騎乗することは、当たり前すぎるほど常識的なことなのですが、日本の乗馬環境はレンタル馬を乗るケースが圧倒的に多いし、現在自分の馬を持っている人でも、レンタル馬を乗っていた時を経ているので、自分の準備運動は考えても、馬の準備運動を考えない。
こういう言い方をすると反論する方もいらっしゃることでしょうが、セオリーとして速歩から運動を始める人が殆どで、いきなり駈歩から始める人はいない。しかし、ウオーミングアップは何のための準備作業なのか、どうなればその準備ができたといえるのかを考えて速歩をしている人を見つけるのは非常に難しいのです。
何事においても準備が大切で、段取り八分といって準備が万端であれば、ほぼ成功が約束されたといってもいいでしょう。
そういう意味で、プリパーレイションということを意識しては如何でしょうか。
今回は、サークルとチェンジリードのプリパーレイションのさわりしか言及していませんが、全てのマヌーバーや全てのモーションには、プリパーレイションがあります。
そのプリパーレイションを探すことは、乗馬の本質に向かうことであり、レイニングとはなんぞやという疑問の回答を得る道だと思うのです。
ライダー一人一人がプリパーレイションをクリエイトすることによって、一人一人の乗馬を発展させることの原点になるに違いありません。
ですから、プリパーレイションには定型があるのではなくて100人のライダーには、100通りのプリパーレイションがあることでしょうし。それが乗馬のプログラムなのだと思います。
2008年2月1日
著者 土岐田 勘次郎
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