Horseman's Column title

   VOL.5 「乗馬は、馬の頭に乗る」 Basic of Western Riding

1. 乗馬とは?

 乗馬とは、どのようなシチュエーションの場合でも、例えば競技や外乗や競馬であってもライダーが馬の背中に乗って馬をコントロールするということに変わりはない。至極当たり前のことだ。
しかし、馬の背中で馬をコントロールするということを理解しているのはたいへん重大な問題だと私は考えている。なぜなら、こんな厄介なことはないからである。
できれば馬をコントロールするのに馬に乗らずにするのであれば、馬の力より強い道具を使ってすれば、コントロールすることは理論上簡単だ。だが乗馬となると馬に乗ってしまって馬をコントロールしなければならない。
 つまり馬に乗ってしまうことによって、ライダーは物理的作用によって馬の肢の運びをコントロールすることが不可能となる。直接的に馬の歩様をコントロールしているのは馬自身なのであり、馬の意志をコントロールすることによってのみライダーは、馬をコントロールできるのだ。
 従ってライダーは、馬の意志をコントロールすることによって間接的に馬の運動をコントロールしているということになり、このことを理解していることが乗馬をする上ではとても重要なことだと私は考えている。

2.乗馬の目的
 ----馬のトレーニングとライダーの上達の相関関係----

 乗馬が馬の意志をコントロールすることによって行われている行為だということを理解できると、馬とライダーがある種一定の方向(ベクトル)を共有してコミュニケーションするということになる。そのベクトルとは、ライダーの意志に対して馬が従っているのが正しいとし、反しているのを間違いとすることである。これを継続して行うことによって馬は、そのベクトルを学習することになり、結果として馬は調教されたということになる。
 つまり乗馬の目的とは、馬がライダーの意志に従うこと良しとするベクトルを馬に学習させるということになる。
乗馬に目的が必要かどうかという議論があるが、それは論外である。その形態(外乗、競技、プロ、アマチュア)の違いに関わらずこのベクトルによって行われているのが乗馬とすると、馬をより従順にするという調教が乗馬の目的であると言うことができる。
 しかしながら乗馬を健康の維持増進とか、精神的リフレッシュとか、単なる趣味でとか、まだ始めたばかりであるとかの理由で馬の調教なんて私には関係ない、ということになってしまいがちだ。また、もう少し上達してからでないとそんなことは考えられないということを言う人もいる。
 そこでライダーの上達ということを考えてみることにする。
  私は、アメリカで馬の調教を学んで日本に帰って来たとき、日本とアメリカに一番違いを感じた部分があった。それは馬の調教とライダーの上達練習を、別々に行うか一緒に行うかという点であった。馬の調教は、それを職業にしている人とか上級の人とかの特別な人がやることであって、初心者はひたすら自分の上達だけを目的に馬に乗ればいいということなっており、これが通常日本の乗馬クラブで行われていることである。
 しかし、乗馬が上手くなるということは、上手に馬をコントロールできるようになることで姿勢や手の位置が安定することではない。結果としてバランスが良くなったり手の位置が安定したり姿勢が良くなったりするということだ。
 つまり馬とのコミュニケーションが上手であるというのが上級者になる必須条件であり、それは馬の反応が起きるたびにそのつどリアルタイムに対処できることが要求されるということになる。
 そうなると、乗馬を練習するには馬の反応と一体的に行っていかなければ、馬の意志を上手にコントロールすることができるようにならないということが結論となる。
 私の上達法は、どんな初心者であっても馬の従順さを高めるというベクトルで馬を調教することを目的に馬に乗るということである。またそうでなくてはならないと考えている。

3.馬のコントロール

 馬のコントロールを考えるときに、私は2つに分けて考えることにしている。1つは、馬をどこに誘導するかというガイドで、もう1つは、馬をどのようなスピードでまたはどのような歩様で(ゲイツ)で運動させるかということである。この2つをライダーは、同時にコントロールしなければならない。これを私は平面的コントロールと立体的コントロールというように分けている。
 ライダーの心理は、平面的コントロールをまず考えてしまいがちである。馬を右とか真っ直ぐとか曲がるなどといったように…。しかし馬のコントロールは、車のコントロールと同じで、決してハンドルだけを切っても曲がらない。つまり車を走らせてハンドルを切らなければ車を誘導することはできない。
馬も同じで馬を動かしながら平面的コントロールを試みなければそれを可能にすることはできないのだ。
私の考えでは、ハミやレイン(手綱)は馬にその進むべき方向を示すもので、ハミやレインを引くことによって誘導するというようには考えていない。
 レインやハミで馬に進むべき方向を示し、脚で馬を推進することによって結果的に馬は示した方向へとガイドできるというメカニズムである。馬を誘導するときは必ず立体的コントロールを先に考えて、その結果平面的コントロールを実現するということになる。

 このように、乗馬を馬のトレーニングということと一体的に上達を望めば、きっとあなたにとって、あなた自身が最高のインストラクターになるはずである。


    馬とあなたとが共有する時間と空間に、真の満足が与えられますように…。

2002年7月 Kanjiro Tokita

※「乗馬は、馬の頭に乗る」のビデオが完成しました。
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