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   VOL.14 「Two Track & Half Pass
        (トゥートラック&ハーフパス)」 


今回は、「トゥートラック」と「ハーフパス」についてお話ししてみようと思います。

 トゥートラックとは、二蹄跡運動のことで、ハーフパスとは、斜め横肢のことです。


 何故「トゥートラック」や「ハーフパス」が馬術上 重要課題と言われているのでしょうか。
 元々は馬体の構造上から生み出された、運動エナジーの効率化を計るための運動法だということができます。

 馬は脊椎の柔軟性を失うことによって、肢の筋肉運動を最小限にして、長時間の運動を獲得したり、人を乗せて運動したりすることを可能にしています。また肢の末端の筋肉を退化させて軽量化も図っています。
肉食獣に比べて、運動における筋肉に対する依存度が低いので、コンディションによる影響が少ないということもまた馬の運動特性の一つです。

馬は、駆動エナジーを効率良く運動に転化するために、第4肋骨にある重心を、脊椎を柔軟に使って駆動エナジーのベクトル上に移動することができない。馬が運動効率を上げるためには、駆動エナジーのベクトルが、重心上を通過するように工夫しなければなりません。
従って馬は、運動効率を良くするために重心を移動するのではなくて、駆動エナジーのベクトルを工夫して、馬の重心上を通過するようにしなくてはなりません。
そこで馬体を前肢と後肢を直線で結んだ長方形を連想して頂いて、その長方形に対角線を入れると、その対角線が乗馬における駆動エナジーのベクトルになるのです。するとそのベクトル上に、質量の中間点である重心が位置するということになります。
その対角線とは、外方後肢から内方前肢へとステップすることによって作られる駆動エナジーのベクトルであり、馬の運動が効率化するということなのです。


つまりトゥートラックとは、サークル運動においてはその輪線上に外方後肢と内方前肢が位置し、直線運動ではその直線上に対角上の前肢と後肢が位置するということです。


これらのことを踏まえると、ライダーは馬の外方後肢をドライブして、その方向は内方前肢へと向かうベクトルを示すことが重要だということになります。


直線運動によるトゥートラックの意味するところは、馬の運動効率ということです。運動効率が悪いということは、馬の疲労に繋がりやすいということになったり、歩様に影響が出たり、その他諸々のことに影響が出ることでしょう。
また、サークル運動によるトゥートラックの意味するところは、馬の運動効率という点では直線運動と変わりはないですが、このトゥートラックができてなければ、遠心力に対する抗力として、外方後肢が機能することができない。結果としてショルダーの倒れを引き起こしたり、転倒を引き起こす原因になったりすることです。




ハーフパスを説明する前提として、言及しておかなければならないことがあります。
それは、ステップのコマンドです。
ステップのコマンドとは、ステップの法則です。
馬が前進運動する場合において、必ず外方肢が内方肢の前方をクロスして、円運動や方向転換をするという法則です。前肢も後肢においてもこの法則通りにステップします。しかし時としてミスを犯し、内方肢の後方をクロスしてしまうことがあります。この時は次のステップにおいて不都合がおき、躓いてしまったり前進しにくくなったりします。
方向の転換や円運動のステップがスムースに行われるためには、ステップのコマンドが着実に実行されなければなりません。

ハーフパスとは、先ず外方の前後肢がそれぞれの内方肢の前方を通ってステップすることが前提で、外方後肢が内方の前肢と後肢との間にステップし、そしてその角度とパラレルに外方の前肢がステップすることで、馬体は斜め前方へ進行します。


ハーフパスとは、ステップのコマンドをライダーの指示下において、馬が確実に反応するように訓練するためのもので、前述したトゥートラック運動を容易にしたり、方向転換円運動や回転運動を容易にしたりするのに役立つと考えられるエクササイズです。


 このコラムのコーナーで既に書いた「モーメント」というテーマでも述べましたが、ライダーと馬との最優先する合意事項、それは「ライダーのドライブする駆動エナジーのベクトルと馬が反応する運動ベクトルの相関関係」や「ライダーが要求するものと馬の反応を一致させる」のために、今回のテーマである「トゥートラック」と「ハーフパス」は、とても有効なトレーニングエクササイズといえます。


 そして、馬が混乱したりライダーへのコンセントレーションを欠いたりしたときに、単にプレッシャーを解放することで対処することも良いでしょうが、それでも済まないときや馬がスケアリーで周りのことに恐れるあまり、ライダーのことに気が回らない場合や新馬で何事においても驚いてしまう場合などは、先ず小さい場所、つまり馬が周りにことに精神を捕らわれる可能性の少ない場所で、先ずライダーと馬との最優先合意事項を確立することが重要なのです。
そのエクササイズとして、「トゥートラック」と「ハーフパス」の運動によるトレーニングを施すことによって、後々に広い場所に出たときや馬がスケアリーになったときに、この運動を要求することによって、確立された合意事項となった運動なので、馬がライダーの指示に対して反応しやすくなっていて、ライダーに対して徐々に馬がコンセントレーションするようになります。
そして馬は、周りに対して恐れなくなる。
実際馬は、周りに恐れなくなるということではなくて、周りに対するよりライダーのプレッシャーに気をとられる割合が大きくなって、結果としてスケアリーでなくなったように感じるということです。
 馬をリラックスさせたり大人しくしたりして育むには、ライダーと馬とのシンプルな合意事項の確立が重要な要素であり、その優先的合意事項として「トゥートラック」と「ハーフパス」は、あらゆる運動の基本であり、馬のメンタルの育成にも重要なものなのです。




                   2008年4月1日
                 著者  土岐田 勘次郎




  


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