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   VOL.19 「Turn Around」ターンアラウンド

 今回は、ターンアラウンドについてお話ししてみたいと思います。
 ターンアラウンドとは、通称スピンと言ったりもします。
スピンをなぜターンアラウンドというかという理由を知ることは、スピンの本質を知る上でとても重要なことだと思うのです。
しかし本来はターンアラウンドという言葉が先にあって、それにスピンという名前を付けたというのが当たっているかもしれません。
 ターンアラウンドとは、サークル運動を意味します。その最小半径になったのがスピンだと考えればいいでしょう。
 本来馬は、回転運動の時必ず前肢も後肢も、回転方向に対して内方肢の外側をクロスして外方肢が運歩します。(私は、このことを馬のステップのコマンドと、便宜上名付けています。)この運動の最小半径になったとき、スピンになります。
各肢の運動における回転半径が小さい順番に並べると、内方後肢・外方後肢・内方前肢・外方前肢という順になります。そして回転半径が最も小さくなれば、内方後肢が1点でステップをするようになって、ピボットターンとなり完全に軸足となるというメカニズムなのです。


 スピンを構造上正しく理解するためには、ターンアラウンドとして知ることがより分かり易いのではないでしょうか。

 スピンでは、何が最優先課題となるのでしょう。
 1. 前進気勢があること。
 2. ステップのコマンドが守られていて、特に内方前肢の外方前肢が外側をクロスすること。
 3. 内方後肢が軸になりポジショニングがしっかりとして、回転中移動してしまわないこと。
 4. 運歩が飛んだりしないで、常歩の歩様でステップがなめらかであること。
 5. 馬体がストレートか、少しだけ内方姿勢をとること。
    
等が挙げられます。


 ここで、それぞれの理由をご説明しましょう
 1番に挙げた前進気勢は、その後に挙げた2から5番の要素全てに関わっていることで、馬がドライブされていなければ、ステップのコマンドが崩れてしまったり、ポジショニングが悪くなったり、内方後肢の軸が外方後肢になってしまったり、また馬の肩が倒れて、外方姿勢でスピンをしたりすることにつながってしまいます。
 特にこの前進気勢が乏しいと、回転方向に対して内方前肢の内側を外方前肢がステップしようとしてしまいます。また後肢の軸足も外方後肢になりがちです。つまりスピンとは、前進モードで行うパフォーマンスで、前進気勢がないことによって馬は、後退モードで回転しようとするので、上記のようなトラブルが発生しやすいということなのです。


 次の2番のステップのコマンドは、回転運動を連続動作としてステップし続けるためには、内方肢に対して回転の外側を外方肢がクロスする法則が守られてないと、馬は内方肢から外方肢、外方肢から内方肢へと交互に行う体重移動がスムースにできなくて、回転する度に軸となる場所を移動してしまったり、つまずいたりしてスムースなステップができなくなったりする原因になります。


 そして3番目のポジショニングで馬がスピンしながら移動してしまうのは、回転時における馬体重の内方後肢への負重が充分でないとき、また負重を維持できない時に起きる現象で、1番2番とも密接な関連がありますが、内方後肢への負重を充分にするために速歩からスピンを始めたり、スピンから速歩の小さめのサークルに移行して、より前進気勢を高めることによって、馬のウエイトシフトを後肢へ持って行くことと共に、内方後肢への負重を充分にして改善を図ったりします。


 4番目のステップが飛んだりしてなめらかなステップができない原因は、大凡内方前肢の問題で、ストライドが小さくて外方前肢のステップを内方前肢が邪魔をして、馬はジャンプアップすることによって、回転をしようとするために起きる現象です。また、内方前肢のステップの方向が、回転の外側へ放り出すような馬にも多くみられます。
 内方前肢のステップの方向とストライドの矯正によって、改善することができます。
 その矯正方法を文章化するのはとても難しいことですが、簡単に説明すると、外方前肢がステップするときに外方のハミを押さえて、馬の頭が内方へ向くのを妨げることによって、外方前肢のステップを妨げ結果的に、内方前肢のストライドを大きくすることにつながり、スムースなステップにすることができます。また内方前肢のステップの方向をより回転方向の内側へ持って行くためには、沢山の方法が考えられますが、一例として掲げるなら、馬の頭をより内方へベンド(曲げて)させて、スピンを行うようにするのがオーソドックスな方法でしょう。


 5番目の馬のフレームについては、馬が外を向いてスピンすれば、馬は肩を倒しライダーが乗りづらいだけでなく、ステップのなめらかさを失い、ポジショニングも崩れ、多くの問題を引き起こす原因となります。
 馬のフレームをストレートか少しの内方姿勢を保って回転することは、その馬が持っているスピンのクォリティを維持するために、とても重要なファクターだと考えなければなりません。


 それでは、馬からライダーへ視点を変えて、お話を続けることにしましょう。
 初心者がスピンをする場合によく見かける悪い例は、スピンをしたいという思いが先走って、馬の前進気勢を失ってしまうことです。
 馬をガイドすること、特に馬の方向転換は、馬のドライブを基本的に妨げる行為なのです。
馬の進行方向を曲げると言うことは、馬の直線的推進力の一方を妨げて、妨げていない方向へと向けることに他なりません。
 ここでとても大事なことは、馬の進行方向の転換において減退する推進力を、補う推進が必要だということと、ある方向へと向かう推進力を妨げた結果、求める方向へと推進力を向かわせるということです。決して直接的に、推進力を求める方向へと向かわせるのではないということなのです。


 例えば、馬が真っ直ぐに推進されて、4肢が真っ直ぐにステップしたときに、外方の角をビット全体で(ビットが、左右均等にプレッシャーがかかるようにして、片効きにならないようにすること。)抑制すると、前肢がストレートにステップできなくなって、内方方向へとステップし、馬は内方方向へと進行方向を変えるということになるのです。
 以上のメカニズムを知ることは、馬のガイド全般のメカニズムを知ることとなり、馬はとてもライダーの指示を理解しやすくなって、それだけでも馬が従順になってくるものです。
そこで重ねていいますが、ビットで抑制するわけですから、そのまま推進を強めなければ、馬の前進気勢は減退して、スムースに運動を継続できないことになってしまいます。つまりビットを使うときには、必ず脚による推進を付随して使わなければならないということなのです。


話をふりだしに戻すことによって、これまで読まれた方は、より一層分かりやすくなると思います。
そこで、スピンのことをターンアラウンドということを思い出していただきたいのです。
つまりスピンをスタートするということは、サークルをガイドすることと同じだということなのです。ライダーは与えた前進気勢の外方を抑制するように、左右均等にビットをテイクして、馬の直線運動を妨げるようにスピンへと移行するようにします。
レインを真横に引っ張って、スピンをしようとする人をよく見かけますが、馬が止まってしまったり後退してしまったりして、上手くいきません。
1番から5番を良く理解されて、そしてスピンはサークル運動の最小形だということを更に理解されれば、スピンを正しく行うことができるようになるに違いありません。


そしてスピンを馬ができるということは、馬にとってあらゆる曲線的誘導に反応できることにつながり、外乗馬であってもセラピーホースやその他どんな馬にとっても、スピンができるように馬を訓練することは、安全で従順なそしてライダーのコントロールしやすい馬への第1歩につながることなのです。

スピンは、レイニングホースに限ったことではなくて、カッティングホース・ワーキングカウホース・ローピングホース・トレールホース・ウエスタンプレジャーホースなどもできるパフォーマンスなのです。

                 2008年8月21日
               著者 土岐田 勘次郎


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