Horseman's Column title

Vol.25 LongingLonge 調馬策)調馬策運動

 ロンジング(調馬策運動)をテーマに、お話をします。
 調馬策は、Longe ともLunge とも書きます。

 一般的にロンジングは、グランドワーク/準備運動/リハビリテーション/ファンデーショントレイニング/その他、様々な目的で行われます。
正しいロンジングとは、それぞれの目的によって多少違ってくるかも知れませんが、共通する守るべきことがあります。

 今回は、この守るべき共通する事柄について、お話ししてみたいと思っています。

 ロンジングにおいてもライディングにおいても共通することは、ライダーやハンドラーに対して、馬がコンセントレーションしていることが大切で、このことによって次ぎに掲げる優先課題が守られて、安全に有効にロンジングやライディングができます。

 そしてその優先課題とは、調馬策の拘束力によって、馬は円運動をするわけですが、ハンドラーが要求する歩様と(3種の歩様の内常歩か、速歩か、駈歩かの選択)そのペース(スピードやカデンス)を守ること、そして、左か右かの回転方向や調馬策に多少の緩みができる程度にガイド(誘導)されていることです。

 つまり以下のことが、最低守られなければならない事柄です。
そしてこれらのコントロールを馬が受け入れるには、ハンドラーに対して馬がコンセントレーションしていることが全ての基となる必須要件です。

1. ゲイツ
  (歩法 ウォーク/トロット/ロープ)
2. ペース(スピード/カデンス)
3. ドラクション(左右どちらかの方向性)
4. ガイド(軌道の誘導)


 通常ロンジングを行う時は、馬が馬房に入っていて多少フレッシュ(張っている状態)な時にすることが多いと思います。ですからロンジングする時に、馬が勝手に跳ね回ったり、好き勝手な歩様だったり、回転方向も馬なりだったりしているのを良く見受けます。
 これらを許すことによって、馬にとっては、自らのメンタルの状態によって、コントロールを受け入れるクォリティのレベルが、大きく違ってしまっても良いということになってしまいます。
 私は、馬がどんな精神状態であろうとも、上記の4つのコントロールを馬が受け入れることが最低限守られなければならないと考えています。

このことはライディングにおいてもグランドワークにおいても同じで、このことが守られるには、馬がハンドラーやライダーへコンセントレーションしていることが全ての基盤になる要件だと考えています。

 本来この4要件が守られるには、先月お話ししたホースマンシップに則って、馬のハンドリングが日常的になされていることが大切で、その上で4要件の基にロンジングすることは、それほど困難なことではなくなるのです。

 私の場合、馬がロンジング(調馬策運動)をした経験のない馬をする時に、最初に行うトレーニングは、リードロープを持つ手に向かって馬がリードされるようにすることです。

 例えば左手でリードロープを1〜2メートル位の長さ(馬からリードを持つ手までの長さ)で持って、身体の左横に肩の高さぐらいに掲げます。そして、空いている右手で軽く音を立てます。(自分の腿を軽く叩いたりして)すると馬は、音を立てた方を避けるようにして、手を掲げた方へ1〜2ステップ歩を進めます。
次ぎに反対側の右手にリードを持ち替えて右横に掲げます。そして左手で音を立てます。すると馬は、その音を避けるように右手へ向かうように1〜2ステップ歩を進めます。これを繰り返すと馬は音を立てなくても、リードを持つ手をどちらかへかざすようにすれば、その手の方へ向かうように誘導されるようになります。
そうなったら1〜2ステップから徐々にステップを増やすようにして、最終的には、ハンドラーの身体の回りを1周でも2周でもするようにします。
 こうして手をかざした方向へと馬がガイドされるように、トレーニングします。

 

馬がガイドされようになったら、今度は空いている手(リードを持っていない方の手)で、馬の後方からゆっくりと追うようにプレッシャーをかけて、ハンドラー望む歩様を馬に求めます。

そしてウォークでもトロットでもロープでも何れのゲイツでも、リードロープがぴんと張った状態になった瞬間に、少しショックを与えるように(ジャーク)リードを引きます。
これを繰り返すことによって、馬が自ら軌道を保つようになって、リードロープをハンドラーと馬が引っ張り合うということがなくなると同時に、馬は絶えずハンドラーとの間合いを気にするようになって、自然にハンドラーに対してコンセントレーションするようになります。

この時に大切なことは、しっかりと注意深く馬を見ることです。


馬をよく観察しながら馬をナーバスにすることなく、プレッシャーをかけるようにすることが何よりも重要で、馬をナーバスにしてしまえば、馬の学習機能は低下してしまって、危険極まりない状態に陥ってしまいかねません。
 馬がペースを守るようにするのも、ハンドラーが希望するペースを守らない瞬間に、それが速すぎればリードでジャークし、遅すぎるようであれば空いている手で後ろからプレッシャーをかけるようにします。

 馬は、手をかざした方へとガイドされるようにトレーニングされているので、例えばトロットからロープへと変換するにしても、リード(左右の)を守らせるにしても、馬の後方からプレッシャーをかけることができるのでしやすいのです。

その逆に、リードロープで引っ張るようにガイドしている状態だと、馬の後肢に対して遠心力がかかりすぎてロングリード(誤リード)になりやすくなってしまうのです。

 ロンジングで大変重要なことは、ガイドの時にリードロープを馬と引っ張り合うようになってしまうことを許さないことです。
ウォークやトロットの時に、リードロープをジャークするようにして、リードロープでのコンタクトに対して、馬が柔軟に反応するようにしておくことです。そうすることによって、馬がハンドラーに対して間合いを意識するようになるのです。

 このような馬の意識を育むことは、ロンジングにおいて何よりも優先して重要視しなければならないことで、全てはこのことによって成ると考えるべきだと思っています。

 最低馬がハンドラーに対する間合いを意識してガイドされるように、トレーニングされていることによって、馬がフレッシュで跳ね回ろうとするのを防ぐのもイージーになるのです。
馬が跳ね回ろうとした瞬間に、リードロープを少しジャークするだけで、馬は直ぐにペースを守るようになるのです。

これらのことが日常の何でもない当たり前のレベルになっていることによって、馬も人も安全が確保されるのです。
ホースマンシップにしてもロンジングにしてもライディングにしても、全ての始まりは、ハンドラーもライダーも自分自身がどんな馬に成って欲しいのか、という目的意識がことの始まりで、その目的を達成するために、我々は何をすべきなのかを探求しなければならないということなのです。

馬に命令をするにしてもコミュニケーションするにしても、人がどんな意識を持つかにかかっているということを我々は知らなければなりません。この意識が原点になって、初めて物事がスターするということなのです。



          2009年1月25日
           著者 土岐田 勘次郎


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