Horseman's Column title

VOL.31 「レインハンド」腕から手まで/意識/レイン操作と姿勢

 今回のテーマはレインハンドです。

 つまりレイン操作ですが、それは目的がレイン操作で、馬をコントロールする為に、ライダーが意図する通りに、腕から手までをどうのようにコントロールして行うかということです。

 しかし、ライダー自身のバランス力が精神の安定と比例するように起伏して、不安がレインハンドの操作のクォリティを左右する。
 ライダーの精神が不安定になると、手でバランスを取ってしまって、本来レインハンドがなす役割(馬をコントロールする。)とは全く関係のない働きをしてしまい、益々馬を混乱させることになり、そしてライダーの不安を煽る悪循環を生んでしまうのです。


 レインハンドは、馬をコントロールする為には極めて重要な役割を果たす。しかしその為には、ライダーのバランスがライダー自身の精神の安定感に深く関与しているので、ライダーが冷静に自らのレインハンドを、意図するままにコントロールできるようにしてこそ、その目的のために機能させることができるのです。


 ライダーのバランスについては、別の機会に譲るとして、ライダーのバランスの影響を最小限にする方法は、手首を地面に対して垂直に保つようにすることで、肩から肘までを上体の線に沿うようにでき、肘を軽く曲げることによって、ライダー自身のボディの動きを肩と肘で緩衝して、レインハンドに対する影響を最小限にすることができる。
 手首を水平にしてしまうと、肘を張るようになって結果的に肩を硬直させてしまうことに繋がり、ボディの動きにレインハンドが連動してしまうのです。


 レインハンドの役割は、馬の推進ベクトルに対して、ある角度を持った抑制力を与えることにあります。つまり、推進ベクトルに対してある角度を持った抑制力によって、実際に馬の進む軌道が作り出される。
こうして馬の運動のコントロールを実現しているのです。


 このような機能をレインハンドによって作用させる為には、先ずライダーが馬の推進ベクトルを感じて感覚的に理解している必要があります。絶えず馬の推進ベクトルを感じていなければならない。
レイン操作は、脚と関連してこそ完結を見るもので、馬の推進ベクトルに対して作る角度とその力加減によって、馬のコントロールを成すものだから、脚と連動してこそその操作を有効にすることができるのです。

 このように馬の推進ベクトルは、ライダーの脚などに因るドライブで作り出されたものであることが望ましいが、このレインハンドというテーマでは、この際このことも別の機会に譲ることとする。


 何れにしても、ライダーが有効にレインハンドを機能させる為には、ライダー自身が馬の推進ベクトルを感じ取れていないことには始まらないのです。


 初心者がしやすいミステイクは、レイン操作で馬を意図する方向へと動かそうとしてしまうことで、レイン操作によって馬の頭の向きを意図する方法へと導くが、決して馬をその方向へと運動させようとしてならない。何故ならレイン操作は抑制力であって、推進力ではないからで、それを推進力だと意識していなくても、レインで馬を動かそうとしてしまえばしまうほど、抑制力を高めてしまい、馬が予期せぬ方向へ動いてしまうことになるのです。
レイン操作は、馬を誘導する為に馬の頭やボディをコントロールして、そこへ推進力を与えることによって、その推進力をライダーの意図する方向へと誘導することになるのです。


 自動車に例えるならば、ハンドルをいくら切っても車はその方へと動くことはない。クラッチを繋いでこそ、ハンドルを切った方向へと車はコントロールされるのであり、馬も同様でいくらレイン操作をしても、ただそれだけでは馬の運動をコントロールすることは適わず、馬を推進してこそレイン操作の機能を果たせるということなのです。



 馬をコントロールするとは、馬に対して推進と抑制のプレッシャーを与えて、推進のエナジーのベクトルをコントロールすると同時に、どのようなスピードで、ストライドで、そしてどのようなベクトルへとアウトプットするかということで、実際には、どのような軌道に誘導するかということと、どのようなストライドのステップをさせるかというコントロールをしているのです。

 馬をコントロールする為には、馬の推進ベクトルをレイン操作によって、抑制力を行使し、その馬の推進ベクトルをライダーの意図するベクトルへと屈曲することが必要なのです。
 その為には、馬の推進ベクトルのライン上にビットがあるかないかが先ず問題なのです。レイン操作による抑制力を有効に行使する為には、レインの先端にあるビットが馬の推進ベクトルのライン上にあることによって、有効にレイン操作によって抑制力を行使できる。具体的には、馬の進行方向と馬の頭の位置が一致しているのかしていないのかが問題だということなのです。つまり馬の推進ベクトルのライン上にビットが位置していなければ、レイン操作が有効に働くことはない。
 そうする為に、馬の推進ベクトル上にビットが位置するようにすることを、第一にしなければならないことなのです。
 馬の推進ベクトル上に馬の頭を持ってきて、それから本来の馬のコントロールの為にレイン操作を始めることができるのです。
 そして、馬の推進ベクトルに対してレインによる抑制力のベクトルとで作る角度が、コントロールされた馬の進行方向が決まるのです。この角度が大きければ大きいほど馬の進行方向は大きく曲げられ、この角度が小さければ小さいほど馬の進行方向は、直線運動に近くなるということです。勿論ここで無視してはならないことは、推進力と抑制力の大きさが相対的にどれくらいの差があるかということで、推進力の方が圧倒的大きければ、抑制力の影響力は反比例して小さくなり、その逆に抑制力が大きければ、それに比例して抑制力の影響力が大きくなります。
しかし推進力と抑制力の大きさが一定であれば、この二つの力のベクトルで作る角度によって、馬の進行方向が決まるのです。


 レインハンドは、先ず馬の推進ベクトルに対してどのような抑制力を与えるかがその役割で、感覚的には(フィール)先ず左右のレインのプレッシャーがイーブンになっているかどうかを、判別できなければならない。そしてライダー自身バランスやボディアクションに影響されることなく、馬をコントロールする為にライダーの意図する通りに、コントロールされなければならない。


 ライダーが意識していることと実際にレインハンドをコントロールすることとが一致していることが、何よりもレインハンドに求められるスキルで、レインハンドのコントロールする精度を高めていく為には、絶えず意識的にレインハンドを操作することによってその感覚を養成することができるのです。無意識にレインハンドを動かしたりレイン操作をしたりしているのでは、そのスキルが養成されることはない。
 実際にレインハンドの感覚を養成するには、例えばレインをリリースする時、頭でレインをリリースしようと考えて、リリースしたとしてもそれでリリースしたというつもりになってしまっていては決して養成されない。自分の感覚でやっていることを信じてはならないのです。リリースしたと思っても必ず目やレインを引っ張って、実際にリリースになっているかを確認して、その事実と思っていることが一致するまでをワンセットとして、チェックする必要があり、その意識と実際が一致するという感覚が身につくまでこれを続けることで、感覚が養成されて、思っていることと実際の行動が一致するようになるのです。


 このことはライダーにとって、レインハンドだけに止まらず脚も重心や姿勢についても同様で、意識することは大切だが必ず意識的行動の後に、その通りになっているかどうかを目やその他の器官でチェックして、意識と実際の食い違いを修正するように努めることによって、益々感覚が生きたものとなってくるのです。そうして馬とライダーにコミュニケーションがちぐはぐにならずに、意思の疎通を緻密に行うことができるのです。




                   2009年8月12日
著者 土岐田 勘次郎


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