「ポスティングトロット」とは、
騎乗法です。日本語名では、軽速歩といいます。
第一の目的は、速歩の2拍子の反動を軽減する為で、2拍子の一拍を鐙立ちすることによって、反動を緩衝します。この反動の緩衝とは、ライダーが馬から受ける反動と馬がライダーから受ける衝撃を緩衝するという2つがあります。
ポスティングトロットのルールは、外方後肢と内方前肢(外方前肢と内方後肢は、ほぼ同時に踏み出す。)が踏み出すタイミングで、鐙立ちをします。
馬の歩法である速歩(Trot or Jog)は、2拍子です。斜対速歩と側対速歩という2つがありますが、馬の場合は、特別に訓練した場合を除いて斜対速歩がナチュラルです。その斜対速歩とは、対角線上の肢、つまり外方前肢と内方後肢、内方前肢と外方後肢が組となって、交互にほぼ同時にステップしている2拍子の歩法をいいます。
2拍子ということは往復運動で、反動が一番大きくなります。
往復運動は、折り返す地点において往と復のベクトルのモーメントが、180度反転をします。つまり折り返し地点で、往く力を超える大きさのモーメントが180度反対方向へ復の力が働くことによって、往復運動がなりたっているのです。
往と復のモーメントが180度折り返す為に反動が大きいということで、この角度が180度でなく小さくなればなるほど、反動が小さくなって滑らかな運動になるということです。
そこで2拍子の一拍をライダーが鐙立ちすることで、次の一拍でサドルのシートに座る時、腰、膝、足首の関節でその反動を緩衝して、反動によるショックを和らげるのです。
馬の速歩というのは、いうまでもなく2拍子で、その2拍子の一拍同士はイーブンのリズムで動いています。つまり拍子の1と2のどちらかが2分音符ならその片方も2分音符だということです。一方が2分音符でその片方が4分音符なら跛行しているということです。
ですから速歩を継続している限り、拍子の1または2のどちらで、ライダーが立っても、座っても、何も問題はありません。
ポスティングは、その目的が2拍子の反動を緩衝する作用だけであれば、外方前肢と内方後肢、内方前肢と外方後肢のどちらのステップに合わせて、ライダーが立っても何ら不都合はないのです。
しかし、ポスティングトロットには世界共通のルールがあって、それは外方前肢と内方後肢のステップのタイミングでライダーが立つということになっています。
このルールと密接な関係性のあることは、ライダーがポスティングをする時に行うことができる推進脚は、ライダーが座った時で、内方前肢と外方後肢がステップするタイミングなのです。つまりポスティングにおけるルールは、外方後肢により強く推進力を与えるということの為に考えられたのです。
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速歩のまま継続して運動を続ける場合は、内方後肢でも外方後肢のどちらに推進力を与えようとしても、2拍子の速歩ですから問題はありません。しかし速歩から駈歩へと移行すると考えた場合に、このルールが関係してくるのです。何故なら、駈歩は外方後肢が主に推進力を発揮して馬は駈歩を行っていて、ポスティングの推進脚のタイミングが駈歩の場合の、外方後肢の推進と同じになるのです。
ポスティングトロットのルールは、外方後肢の踏み込みの為に考案されたもので、それは駈歩への移行をする場合に必要なのであるということがいえます。
さてポスティングトロットをする場合、最初は外方の前肢の踏み出すタイミングで立つように練習するのが良いでしょう。
この場合、初めから馬の外方の肩を見て立つようにしないで、感覚的に外方前肢が踏み出すのに意識を傾けて立つようにして、その後にそれが合っているかどうかを確かめるように、事後に確認する為に馬の肩を見るようにすることによって、見なくても外方後肢のステップを感じ取れるようになるのです。
また、鐙立ちをする場合、なかなか2拍子のリズムで軽快に立てるようにできないものです。多くの人は、自分の身体に力を入れて立とうとして、ぎごちなくなってしまっています。この時に、できる限り馬の反動を利用することです。馬の後肢に突き上げられるタイミングに合わせて立つようにすると、身体の力を抜いたままでも鐙立ちできるようになります。
先程最初は、外方前進の踏み込みに合わせて立つというように書きました。最初の内はそれで良いのですが、リズム良く鐙立ちできるようになったら、なるべく後肢の踏み出すタイミングに合わせるようにしなければなりません。
何故なら、乗馬はリードチェンジにしても停止にしても多くの場合、後肢のステップをライダーが感覚的に読み取れるようになることが重要なことだからです。
ポスティングトロットは、第一の目的は2拍子の反動を緩衝する為にあり、次ぎにライダーのシートの座るタイミングは、外方後肢の踏み込みと密接な関係を持ち、そしてライダーが馬のステップを、感覚的に読み取れるようになる為にも役立つということです。
また馬がトロットのペース配分をライダーの刻むリズムによって、それに合わせるようにトレーニングするのにも役に立つ。最初は馬がもっているリズムに合わせてライダーがポスティングをするようにしますが、徐々にライダーが少しずつリズムを早めたり遅くしたりすることによって、馬はそのリズムに合わせてペース配分するようになり、これを利用してペース配分をトレーニングすることもできるのです。
馬のスピードコントロールやストライドの調節を、トレーニングすることができるのです。
ポスティングトロットは、ライダーが単なる乗馬から馬術へと移行する為には、身に付けなくてはならない登竜門だということができる大切なスキルだということができます。
2009年10月16日
著者 土岐田 勘次郎
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