Horseman's Column title

VOL.36 Spin / Turn Around 「スピン/ターンアラウンド」


 スピンは、内方後肢を軸足として、内方前肢の外側を外方前肢がクロスしピボットターンする運動をいう。
 別名ターンアラウンドとも言い、スピンのステップはサークル運動と全く同じで、前進運動のステップで前肢も後肢も回転方向の内方肢の外側を外方肢がクロスして、回転運動をする。
 このスピンの時の歩様は、飽くまでもウォークでスムースで滑らかな運歩を求められ、スピードが速ければ速いほど良いとされる。


 馬の運歩には、法則がある。その法則を、ステップのコマンドと私は名付けている。


 そのステップのコマンドとは、前肢も後肢も回転運動において必ず内方肢の外側を外方肢がクロスしてステップするという法則だ。
 従って、この法則はスピンにおいてもいえることで、例えば右スピンであれば右前肢の外側を左前肢が回り込んでステップし、後肢もまた右後肢の外側を回り込むステップをする。左スピンの場合は、全くこの逆モードとなる。


 馬の骨格構造は、間接が人の手首の関節の動きとは違って、左右横に屈曲しない、前後に屈曲することしかできない。つまり骨格構造として、回転運動はし難い構造だということができる。
 従って、肩胛骨の角度がスピン運動には密接な関係性を持っていて、肢の間接が横に屈曲する構造を持っていないために、肩胛骨の角度によって作られる緩みが回転運動を可能にしているので、肩の角度の立ちすぎている馬は、スピンの苦手な馬が多いことでも密接な関係性を持っていることが分かる。


 レイニングホースを選ぶとき、多くのレイナーが口を揃えてスピンのクォリティの高い馬をという。スピンのクォリティの高い馬は、サークル運動もスライディングストップもチェンジリードもトレーニングが容易だというのも定評のあることだ。それは、前肢のステップの軽快性や後肢の踏み込みやバランシングの良さなどが、そういわれる所以だ。
 また、その馬自身に備わった体型や運動神経などに、スピンのクォリティが左右されるからともいえる。つまりトレーニング方法ではどうにもならない要因がスピンにはあって、それは体型や運動神経やメンタルの才能に左右されるパフォーマンスだということだ。


 スピンにおいて考えられるリスクは、先ず外方前肢が内方前肢の内側に入ってしまい、ステップのコマンドが壊れてしまうということがある。(外方前肢が内方前肢の内側へ入るとは、内方前肢の後ろ側に外方前肢がステップしてしまうということ。)


 この原因は、前進気勢が減退していることが上げられる。
スピンは前進運動であり、前進運動だからこそステップのコマンドが守られる。そして、間接が横に動かないので、真横にステップするように肢を動かすことができないために、前進気勢が必要なのだ。
しかし前進気勢を横の運動に転化させることは、前進気勢を抑制させることなので、ステップのコマンドが壊れてしまうリスクがあるのだ。

 
 よく初心者に見ることができるミステイクは、スピンを回そうという意識が勝ちすぎて、前進気勢を阻害し過ぎてしまいステップのコマンドを壊してしまうことだ。


 次ぎに考えられるリスクは、後肢の軸足が外方後肢になって仕舞うことだ。スピンにおける軸足は内方後肢だ。内方後肢が馬の重心近くまで踏み込んで、その内方後肢へ重心を負重することによって、回転運動の軸となり前進モードが維持できる。
 外方肢が軸足になって仕舞うのも、前進気勢が減退することによって起きる現象だ。


 前肢のステップのコマンドが壊れるのも軸足が逆になって仕舞うのも、前進気勢の減退によって起きると考えることでき、これらを矯正するには、前進気勢を高めることによって、フィジカル的には解決する。
 オーソドックスな矯正法は、速歩からスピンを入れたりスピンから速歩へ移行したりすることで、前進気勢を維持しながらスピンをすることができて効果的な矯正法だ。
 しかし、軸足が逆になったり前肢のコマンドが壊れたりしてから長時間を、経過してしまっている馬の矯正はそう簡単ではない。何故なら、メンタルの問題が長期間ロングフットによるスピンをしていたことによって、馬自身が無意識にそのロングフットのスピンができるように覚えてしまっているから、そのメンタルを矯正するには、馬のメンタルが混乱したり興奮したりしてしまうから、中々矯正するのが難しいのだ。

 この場合は時間をかけることと、間違ったステップ(ロングフット)を絶対に許さないということだ。ロングフットを許さないということは、ロングフットになった瞬間にスピンを止めるようにウォークアウトして、再びスピンをするようにトレーニングしなければならない。ロングフットのままスピンを続けてはならない。


色々な矯正法があるがこの紙面では書ききれないし、ケースバイケースということになるので、その馬がどうなっているかを診断せずに矯正法を選択するわけにはいかない。
 唯、キーワードは前進気勢とミステイクをしたままスピン運動を継続してはならないということだ。ミスをしたまま続けていると、馬はそのミスを学習してしまい矯正するのが益々困難になって仕舞う。正しいステップを確実に一歩一歩学習させてトレーニングすることが大切で、ミスをしたら直ちにウォークアウトして、再びスピンをするというようにするようにしたい。
 ミスをしたまま正しいステップへと矯正するという方法は、大変効果を上げるのに難しい。正しいステップを一歩一歩繰り返すことが重要で、ミスステップを許してはならない。特に長期間ミスステップをしてきた馬を矯正する場合は、この点を大切に考えなければならない。


 スピンにおいて最も求められるライダーのスキルは、馬のステップを読み取る感覚とバランス感覚だ。
 ライダーが馬のステップを感じてリアルタイムに読み取ることができなければ、正しいステップもミスステップも分からないから、馬を正しいステップへ導くことはできない。
 またスピンの回転運動は、コマのように円の中心を軸にして、遠心力と求心力が相殺されながら運動を続けるもので、ライダーがその円運動の中心に座って、上体を前後運動などせずにバランスが取れていることを要求される。ライダーがバランスを崩すことによって、馬は円運動の継続が困難になって、歩様が乱れることになって仕舞う。従ってライダーのバランス感覚は、スピン運動によって重要だといえる。

 スピンのトレーニングプログラムもトレーナーによって様々だ。しかし共通することは、前進気勢と軸足だ。

 私のスピンを作るトレーニングプログラムについての考え方を、少し述べることにする。

 スピンの完成形は、後肢も前肢も回転方向に対してステップインだ。
しかしは、私の場合はステップアウトから始める。


 前肢のステップインよりも先ず後肢のステップアウトを、特に内方後肢のステップアウトを作ることから始めるというものだ。


 小さくサークル運動をするようにインサイドレインを引いて、内方後肢がアウトサイドステップするように内方脚でプレッシャーを与える。この時内方脚は、馬によってケースバイケースだが、内方前肢にステップインを許さないように注意して使うようにしている。
 内方脚で内方後肢をステップアウトするように、プレッシャーを掛けるだけでは容易にステップアウトしないが、インサイドレインを引くことと内方前肢のステップインを許さないように脚でプレッシャーを掛けるのとを組み合わせると、容易に馬は内方後肢をステップアウトする。

 このトレーニングで良いことは、それは外方後肢が大きく内方後肢の外側を回り込んでステップするようになるという点だ。
このトレーニングでも大事なことは、やはり前進気勢を失わないようにすることだ。
 そしてステップアウトしてステップアウトして、外方脚とアウトサイドレインで馬の前進気勢に対してブレーキを掛けるとうにして、外方前肢をサイドステップさせる。そしてそのインサイドステップした後にウォークアウトする。決して何歩もスピンのステップを求めず、急がずに一歩を確実にするようにして、徐々にステップを増やしていくということを大切にしている。

 最終的にショーイングのことを考えて、スピンで重要視しなければならないことは、スピンをストップするということだ。
何故ならスピンというパフォーマンスは、オーバーやアンダースピンによるペナルティが大きいからだ、簡単にペナルティ0や1を期してしまう。だからライダーのキューイングでスピンをストップするように、トレーニングすることが重要になってくる。


 ライダーの意のままにスピンをストップできるように、トレーニングする方法として私は、先ず「ウォー」とボイスキューを使う。レインコンタクトはしない。この時、馬がぴたっとストップしない場合、レインコンタクトし馬を停止させると共にバックする。これを繰り返す。
 「ウォー」といって、馬が止まらなかったらレインを引いて止めてバックする。するとやがて「ウォー」というだけで、馬はストップするようになる。
このようにトレーニングしておくことによって、ショーイングの時にペナルティーを、容易に防ぐことができるようになる。


 スピンは、プラスワンを獲得するのは中々難しいが、ペナルティ1を期してしまうことはイージーなパフォーマンスだ。従って、ライダーの感覚でイージーにストップできることに対して、スピンのクォリティを上げることと同レベルの神経を使わなくてはならない。




  2010年1月26日

  著者 土岐田 勘次郎


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