VOL.22 馬の調教1 |
そして、乗用馬として調教するには、原則としてこのメンタルのメカニズムを理解しておくことが重要なのです。 ライダーが馬に何かを要求するために、脚やビットでプレッシャーをかけると、馬はマイナス要因として受け取り緊張し、そのプレッシャーから逃れようとし、そのプレッシャーをリリース(解放)すれば、馬はプラス要因だと受け取りリラックスする。 更に馬に限らず人間でも自ら発する言動を、何らかの基準を以て肯定や否定の判断をして、次の言動にこれを勘案して修正を加える。 それには肯定と否定の原則があって、行動の前と後のプレッシャーの相関関係によって、肯定されたと解釈するか、否定されたと解釈するかが決まる法則があるのです。 その法則は、行動の前(A)後(B)のプレッシャー対比として、Before PressureとAfter Pressureの相関関係は次の通りとなる。 A > B = 肯定 A < B = 否定 つまり、行動の前のプレッシャーに比べて後の方が、小さい場合は、肯定と解釈し、大きい場合は、否定と解釈するという法則です。 |
人間の場合でも、人に何かを依頼してその行動の後に「ありがとう」と感謝の言葉を述べたとしても、依頼したときのトーンよりも荒々しく「ありがとう」といえば、行動の後のプレッシャーの方が大きくなって、言葉の持つ意味が肯定であっても否定されたと感じてしまうのであり、依頼したトーンより優しく下げて「馬鹿野郎」といったとしても、言葉の意味が否定であっても肯定されたと感じるものなのです。 このプレッシャーの強弱に意を払わずに、言葉の意味だけで会話をしようとする人のことを、流行の言葉で表現すればKYということで、空気の読めない人ということなのです。
馬の調教は、このプレッシャーの強弱をトレーナーに操れる感覚が備わってこそで、この感覚によって馬とのコミュニケーションを円滑に行うことができ、正確に肯定と否定を馬に伝えることができることによって、混乱することなく馬がこれを学習することができるのです。 馬の正常な生命維持機能を保持していることを前提に、トレーナーのプレッシャーの強弱を巧みに操作する技能(感覚)によって、一貫性を以てキューイング(合図)と馬の反応との連動性を創ることが、調教なのです。 2012年1月24日 著者 土岐田 勘次郎 |
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