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    VOL.24 「馬の調教3(最終章) 重心と運動 ムーブメント」

                                                 

 2012年4月号


 今月のテーマもまた調教です。


 調教1では、馬のメンタルを中心に解説し、調教2では、フィジカルの運動メカニズムで、運動エナジーと進行方向やステップ角と進行方向との関係性について述べた。
 そして今月は、重心と運動との関係性について、つまりムーブメントの解説をしようと思います。



 重心とは、質量の中間点で、馬の場合は第12肋骨付近にあるといわれており、ライダーが騎乗しているときは、馬と人間との質量の中間点に新しい重心が生まれ、馬が単体で走っているときも、首が下がったり上がったり肢がキックバックしたり踏み込んで馬体の下に来たとき、それぞれ質量の中間点が変わるから重心は移動するが、ライダーが騎乗したときは、更にライダーが馬上でバランスを崩したり動いたりすれば、ライダーと馬とでできている新しい重心もまた移動するのです。

 ものが動くことは重心の移動であり、そして自然界でその重心が移動するということは、重心が不安定と安定とを繰り返したり不安定のままであったりすることであり、物体は絶えず重心の安定へと向かうベクトルを有し、水が低きに流れることも、ものが高いところから低いところへ落ちることも、物体が絶えず安定へ向かうという法則に叶ったムーブメントなのです。

 物体には重量があり、重量を越える力を加えるか、物体自身のバランスを変えて不安定を作るか、物体を支えている力を増減することによって、物体は運動する。




 実際に馬は、大凡二つのムーブメントによって運動している。

 その一つは、首を振り子のように振って不安定を作って運動を起こし、その不安定を回避しようとステップしこれを支え、更に首を振ってバランスを崩して運動を起こし、安定するためにステップして支えることを、繰り返すメカニカルムーブメントによって運動をしている。

 このメカニカルムーブメントは、首の振り子運動によりアンバランスを作って運動し、ステップによって安定を作り、これを繰り返す運動のことで、これは首の筋肉は使うものの肢の筋力負担を極力軽減した運動で、馬の持久力を助けて長時間走ることを可能にしている。
 馬は、省エネ運動の有なのです。

 もう一つは、初動としてステップし、ステップしていない肢に負重している重心を、ステップしていない肢の筋力でステップした肢へと移行するように運動するテクニカルムーブメントです。

 ブリティッシュライディングの屈撓させているときの運動で、屈撓によって首の運動を制限しているために、馬はメカニカルムーブメントによる運動をすることができずに、筋力によるテクニカルムーブメントとなる。
 この運動は、メカニカルムーブメントに比べて圧倒的に筋力によるところが大きいので、発汗やエナジーの消耗が激しくなるのです。
 勿論屈撓させなくても首の運動を制限して運動すれば、馬は必然的にテクニカルムーブメントの割合が大きくなるので、体力の消耗が大きくなるのです。





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