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    VOL.24 馬の調教3(最終章)「重心と運動 ムーブメント」

                                                 


 馬は進化の過程において、省エネ運動を獲得した動物で、首を振り子のように使って重心バランスの不安定を作りだし、主たる運動エナジーを引力に求めることによって、極力筋力の負担を軽減して運動することができるようになっているのです。

 そして人類は、このメカニズムを利用するためにビットを付け馬の首の運動をコントロールして、馬自身の運動をコントロールすることによって、乗馬を実現しているのです。

 馬はこの二つのムーブメントを区分して運動しているわけではなくて、両方を駆使して運動している。しかし自然のままの運動となると馬は極力メカニカルムーブメントによる運動の割合を大きくしようとするのです。

 しかしメカニカルムーブメントは、省エネであり直線運動や連続運動に適しているが、方向の転換や運動の移行などにおいては欠点がある。
 何故なら前肢にかかる負重の割合が大きいままなので、方向の転換が困難なのです。
 そこで第12肋骨にある重心を後駆へより移行して、前肢の負重の割合を軽減しようとして、後肢の踏み込みや首の高揚を促してバランスバックを行うのです。結果的に首の運動を制限することになるので、テクニカルムーブメントの割合が大きくなりエナジーの消耗が大きくなるのです。

 そしてメカニカルムーブメントは、特に訓練しなくても馬に備わった運動なので、調教という観点においては、テクニカルムーブメントによる運動を訓練することになるのです。
 ステップしてから重心の移動が始まるようにするトレーニングが必要になるのです。







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 ロングトレールとなるカウボーイのキャトルドライブやモンゴルの馬などは、メカニカルムーブメントで運動することが重要で、このようなときに屈撓などの首の運動を制限して馬を運動させようとすれば、忽ち疲労して長時間使役に耐えさせることは不可能になってしまうのです。

 しかし、ドレッサージュやレイニングのように絶えず運動の移行や方向の転換を求めるような馬術においては、ライダーの要求に応じて何時でもテクニカルムーブメントによる運動ができるように訓練しておく必要があるのです。

 また収縮とは、最小限の力で体重を支えるため重心の真下へより近く肢が位置する態勢のことで、後肢を深く踏み込ませることなのです。
 そして収縮することによって、メカニカルムーブメントもテクニカルムーブメントも容易になる。何故なら、重心の真下に支点である肢が位置することによって、重心バランスを崩すことも、重心を筋力で移動することも最小限の力で容易にできるからなのです。
 つまり、収縮とは、馬術のためだけに意味を成すものではなくて、あらゆる乗馬にとって有意義なことで、重心の移動(運動)が容易にできるための態勢なのです。



 馬を調教するということは、メンタルとフィジカルをライダーの要求に応えられるように訓練することであるが、ムーブメントを考慮することによって、物理的にライダーの要求に応えやすい態勢があることを、理解しておく必要があるのです。







             2012年3月29日

             著者 土岐田 勘次郎


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