その2
Hoary Headed:
そうなんだ。ウエスタンとくりゃ、すぐに外乗だ。外乗しか知らねぇのかって言うんだ。それに外乗を馬鹿にしたような言い方しやがって、いったい外乗を何だと思ってやがるんだ。 人間が移動手段として馬を利用し始めたのが、馬が家畜化した始まりだ。つまりだ、トレイルに馬術の原点があるっつうことだ。 |
なに?。ウエスタンを囓っている奴もよくないってか。全部知ってるような口を利くってか。 それはな、他人が知らないことを、自分だけが知ってるっつう優越感を味わいてぇつうことなんだ。 |
Hoary Headed:
それから、ウエスタンの乗馬にはルーズレインてぇのがある。みんな聞いたことがあるだろう。だけど、それがどんな意味を持っているんだか知ってるのは、ウエスタンを囓ってる奴にも、なかなかいねぇだろう。まして、ブリティシュをやってる奴なんか、なんでレインをルーズにして、馬が言うことをきくのかさえ不思議だろうな。これには奥の深い馬術的意味が含まれてんだ。 ブリティシュの奴らだけでなく、ウエスタンを囓ってる奴らもよく聞けってんだ。 馬の首はなぁ、その反動が、馬の運動にたいへん重要な役割を果たしてんだ。 ところがだ。ブリティッシュの馬みてぇに、レインをピーンと張って馬の首を固定してしまったら、人間の運動神経の範囲でしか馬は動けねぇんだ。そしたら、牛はあさっての方へ行ってしまうんだ。わかるか。 それだけじゃねぇ。牛が、急に反転したり、横っ飛びしたりしたときだ、つまり、急激な横の動きに対応するためにゃあ、馬の首を自由にしただけじゃできっこねぇんだ。 なにっ?。何故ってかぁ、よく聞いてくれたなぁ。馬は、自然体のとき体重の約6割が前肢にかかってんだ。だから、軽快な横の動きがあまり得意でねぇ。軽快な横の動きを可能にするためにゃ、後肢に体重配分を移さなきゃなんねぇんだ。このことにゃ、ブリティッシュもウエスタンもねぇ。どれも同じだ。 でもそれは、ここじゃ教えらんねぇな。ふっふっふっ。 ところで、俺ぁ、障害も馬場馬術も、たいへん高度な馬術だと思ってんだ。しかしだ。色々な種類の馬術が、地球上には存在するってぇことも知らなくちゃなんねぇ。 他の馬術を良く知りもしねぇで馬鹿にするのは、自らの馬術も大したことねぇし、自分の馬術のことも良く理解できてねぇつうことだ。 それから、日本人は、外国からきたものを、理由もなく尊敬してしまったり、馬鹿にしてしまったりする傾向があるんだ。 まず、よく自分の足下をよく診ることだ。日本の文化にも充分優れているものもあれば劣ってるものもある。その本来の姿をよく診ることができれば、また診るように心がけさえすりゃ、知らねぇことにぶつかってもだ、訳もなく尊敬してしまったり、その逆もなくなるはずなんだなぁ。 さらには、軽々しく、何でもわかってしまったような気には、なれねぇはずだ。本当に物事の本質をつかんだときゃ、えもいわれぬ喜びっつうのを味わえるもんだ。 |
なんだって?。訳もなく外国のものを有り難かったり、馬鹿にしてしまうことがあるってぇことか。これは、さっきも言ったけど、日本人は、自分の考えを、他人との協調の中でしか考えられねぇから、自分自身に本当の誇りと自信つうのが備わってねぇんだな。 全く余談だが、消費税導入のときだって、マスコミが反対するものだから国民総ヒステリック状態になってだなぁ、高齢化社会の到来や直間比率の見直しなんてことや、税金の国際的調整などといった議論にゃ耳を貸さなくなっちまう。 自分自身の見識を持たねぇ人間なんて、誰からも尊敬されたりするわけがねぇんだ。 |