hoary headトークバトルバナーCalvous
その2

   Hoary Headed: 

 そうなんだ。ウエスタンとくりゃ、すぐに外乗だ。外乗しか知らねぇのかって言うんだ。それに外乗を馬鹿にしたような言い方しやがって、いったい外乗を何だと思ってやがるんだ。
 外乗を英語で言えば、Trailって言うんだ、知ってっか。トレイルっつうのはなぁ。簡単に言っちまえば、旅ってことだ。本来は、単なる旅ではなくてだ。目的を持った旅で、何かを追いかけてくような、例えば、牛の群を追いかけつつ、する旅のことだ。こんなこと知ってるかってんだ。

 人間が移動手段として馬を利用し始めたのが、馬が家畜化した始まりだ。つまりだ、トレイルに馬術の原点があるっつうことだ。
 馬で旅行するっつうことは、あらゆる馬術の要素がいっぱい詰まっているってぇことなんだ。
angry hoary head例えばだ。ただでさえ臆病な馬を、山あり谷ありの荒野を厭わず、ライダーの指示を素直にきかせなくてはなんねぇし、ときにゃ、嵐で倒れた大木の障害を、飛び越えなくてはなんねぇときもあるだろう。それから、一日中乗ってても馬がバテねぇのは、単なる偶然だとでも思ってるんか、考えたこともあるめぇ。
 そらぁな、馬の本来持ってる特性を上手く利用しようって、考え出した知恵で、無理させねぇから一日中でもバテないで乗ってられるんだし、故障も少ねぇんだ。こらっ、わかってんのか。
 これを馬術と言わずして何つうんだ。
いま流行の言葉では、エンデュランスって言うんだろうが。

Calvous:                        

 なに?。ウエスタンを囓っている奴もよくないってか。全部知ってるような口を利くってか。Calvous

 それはな、他人が知らないことを、自分だけが知ってるっつう優越感を味わいてぇつうことなんだ。
 本当は、物事を知ってるか知らねぇかってことなんか、大した問題じゃなねぇ。ただ知ってるだけじゃ何の価値もありゃしねぇ。要は、物事を知って自分の生き方にどんな風に生かしてるかってことなんだ。これが価値を見いだすことができるってことなんだ。

   Hoary Headed: 

 それから、ウエスタンの乗馬にはルーズレインてぇのがある。みんな聞いたことがあるだろう。だけど、それがどんな意味を持っているんだか知ってるのは、ウエスタンを囓ってる奴にも、なかなかいねぇだろう。まして、ブリティシュをやってる奴なんか、なんでレインをルーズにして、馬が言うことをきくのかさえ不思議だろうな。これには奥の深い馬術的意味が含まれてんだ。
 これは、馬が人間よりも、たいへんに優れた運動反射神経を持ってることを熟知してるからこそのことなんだ。そのことをだ、充分に活用しようとした知恵なんだ。こんなこと誰も知るめぇ。

 ブリティシュの奴らだけでなく、ウエスタンを囓ってる奴らもよく聞けってんだ。hoary head

 馬のはなぁ、その反動が、馬の運動にたいへん重要な役割を果たしてんだ。
 それは例えばだ、人が立ち幅跳びをしようとしたときに、大きく腕を振って、その反動でより遠くへ飛ぼうとするだろう。これと同じで、馬は首を振って、その反動で運動してるんだ。これが馬の運動の特徴だ。馬の首が自由に動けるつうことが、馬が持っている能力を、自然に発揮できる、とも言えるんだ。
 素速く動く牛を追いかけるにゃ、馬の優れた運動神経を以ってしなくちゃ、できっこねぇ。
 馬の背中の人間の運動神経なんかじゃ、牛の素速さに到底対応できっこねぇ。

 ところがだ。ブリティッシュの馬みてぇに、レインをピーンと張って馬の首を固定してしまったら、人間の運動神経の範囲でしか馬は動けねぇんだ。そしたら、牛はあさっての方へ行ってしまうんだ。わかるか。

 それだけじゃねぇ。牛が、急に反転したり、横っ飛びしたりしたときだ、つまり、急激な横の動きに対応するためにゃあ、馬の首を自由にしただけじゃできっこねぇんだ。
 頭の堅てぇお前ぇらにわかるめぇ。

 なにっ?。何故ってかぁ、よく聞いてくれたなぁ。馬は、自然体のとき体重の約6割が前肢にかかってんだ。だから、軽快な横の動きがあまり得意でねぇ。軽快な横の動きを可能にするためにゃ、後肢に体重配分を移さなきゃなんねぇんだ。このことにゃ、ブリティッシュもウエスタンもねぇ。どれも同じだ。
 だがよ、ウエスタンは、ルーズレインのまま、これをやんなくちゃなんねぇんだ。
 そこでだ!カウボーイ達は、ルーズレインのまま後肢に体重配分を移すことを発明したんだなぁ。どんな方法だってか。それを聞くかね。

 でもそれは、ここじゃ教えらんねぇな。ふっふっふっ。

 ところで、俺ぁ、障害も馬場馬術も、たいへん高度な馬術だと思ってんだ。しかしだ。色々な種類の馬術が、地球上には存在するってぇことも知らなくちゃなんねぇ。

hoary head他の馬術を良く知りもしねぇで馬鹿にするのは、自らの馬術も大したことねぇし、自分の馬術のことも良く理解できてねぇつうことだ。
 つまりだ。自らの浅慮をさらけ出してることだと俺ぁ思うんだ。

 それから、日本人は、外国からきたものを、理由もなく尊敬してしまったり、馬鹿にしてしまったりする傾向があるんだ。
 例えばだ。ブランド品を理由もなく有り難がって、ろくに金もねぇのに無理して買いあさったり、一方じゃ東南アジアから来るものを訳もなく低く見てしまったりするっつうのがそれだなぁ。

 まず、よく自分の足下をよく診ることだ。日本の文化にも充分優れているものもあれば劣ってるものもある。その本来の姿をよく診ることができれば、また診るように心がけさえすりゃ、知らねぇことにぶつかってもだ、訳もなく尊敬してしまったり、その逆もなくなるはずなんだなぁ。

 さらには、軽々しく、何でもわかってしまったような気には、なれねぇはずだ。本当に物事の本質をつかんだときゃ、えもいわれぬ喜びっつうのを味わえるもんだ。 

 

Calvous:                        

Calvous なんだって?。訳もなく外国のものを有り難かったり、馬鹿にしてしまうことがあるってぇことか。これは、さっきも言ったけど、日本人は、自分の考えを、他人との協調の中でしか考えられねぇから、自分自身に本当の誇りと自信つうのが備わってねぇんだな。
 だから、外国からきたものを周りの人がいいと言うのを聞くと、訳もねぇのにいいと思っちまう。また逆にだ、周りが駄目だと言うから、よく知りもしねぇうちから、駄目だと決めつけちまうんだ。全くどうしようもねぇ国になっちまったもんだ。

  全く余談だが、消費税導入のときだって、マスコミが反対するものだから国民総ヒステリック状態になってだなぁ、高齢化社会の到来や直間比率の見直しなんてことや、税金の国際的調整などといった議論にゃ耳を貸さなくなっちまう。           

 自分自身の見識を持たねぇ人間なんて、誰からも尊敬されたりするわけがねぇんだ。

そのへ続く NEXT


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